寝つきが悪い・不眠は病気でしょうか?
不眠症とは、入眠困難、中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害などが起こり、日中に眠気、倦怠感、意欲低下、集中力低下といった症状をきたす病気です。疫学調査で、これらの症状が1か月以上持続すると、難治性となることが多いとされております。
このような症状のお困りではありませんか?
- なかなか寝付けない
- 夜中に何度も目が覚める
- 目覚ましがなる前に目が覚める
- 明け方に目が覚めたまま眠れない
- 睡眠時間は十分だったはずなのに寝足りない
- 日中に強い眠気がある、だるい
- 意欲や集中力が低下している
不眠症には4つのタイプがあります
不眠症は大きく、以下のように分類されます。
入眠困難
布団に入ってから30分~1時間は眠れないタイプです。
途中覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまうタイプです。
早期覚醒
目覚めるつもりだった時刻より2時間以上早く目が覚め、その後眠れないタイプです。
熟眠障害
睡眠時間を十分とっているはずなのに、眠りが浅く寝足りないように感じるタイプです。
不眠の原因
不眠症の原因には、以下のようなものがあります。
ストレス | 緊張、不安などがストレスとなり、睡眠を妨げます。 真面目な方ほど、ストレスを感じやすくなります。また、眠れないことがさらにストレスになるという悪循環に陥りがちです。 |
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からだの病気 | 高血圧や心臓疾患に伴う胸の痛みや苦しさ、呼吸器疾患に伴う咳、腎臓病や前立腺肥大に伴う頻尿、関節リウマチに伴う痛み、アレルギーに伴うかゆみなどが気になり、睡眠を妨げます。 また、睡眠時無呼吸症候群、ムズムズ脚症候群も、不眠症の原因となります。 |
こころの病気 | うつ病など、こころの病気が不眠症など睡眠障害の原因になることがあります。 |
薬や食事 | 降圧剤、甲状腺製剤、抗がん剤などの副作用で睡眠が妨げられることがあります。 よく知られたように、カフェインも利尿作用・覚醒作用により睡眠妨げることがあります。 またアルコールは、適量であれば入眠を助ける効果はあるものの、逆に中途覚醒を起こしやすくすると言われています。 |
生活リズムの乱れ | 夜勤などに伴う昼夜逆転生活、週末の寝だめなどによって、睡眠のリズムに狂いが生じます。 |
環境 | 光、音、温度、湿度などの影響で寝苦しさを感じることがあります。 |
不眠症に対する「西洋医学」「漢方医学(東洋医学)」の考え方の違い
西洋医学では、不眠症の治療において、不眠の原因を除去することに重点が置かれます。睡眠薬、睡眠導入剤、漢方、精神療法などによる治療が行われます。
一方で漢方医学では、眠りと「気」との関係に着目した治療が行われます。疲労やストレスなどによって乱された気の巡りをもとに戻すための漢方の処方が行われます。
ストレスと不眠の関係性
脳は、起きている状態を維持する「覚醒中枢」と、脳を休ませる「睡眠中枢」を持ちます。
両者のバランスが保たれていることで、良質な睡眠が可能になります。しかし、緊張や不安、疲れといったストレスがあると、このバランスが崩れ、不眠症に至る要因の1つになります。
不眠の漢方治療
近年は副作用の少ない、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が普及し始め、当院でも積極的に取り入れております。
また、当院では、できる限り副作用の少ない漢方薬や自律訓練法を取り入れることによって、不眠症を改善・解消することに努めます。
漢方薬 | 陰陽 | 虚実 | 特徴 |
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黄連解毒湯 | 陽証 | 実証 | 顔の紅潮、イライラ、不眠、PMS、更年期障害、湿疹 (のぼせて顔がほてる方によく用いられます) |
柴胡加竜骨牡蠣湯 | 陽証 | 実証 | 驚きやすい、精神不安、悪夢、不眠 (抑うつ、緊張、イライラなどによく用いられます) |
三黄瀉心湯 | 陽証 | 実証 | PMS、更年期障害、便秘、痔 (のぼせ気味で、不安、便秘がある方の不眠によく用いられます) |
加味帰脾湯 | 陰証 | 虚証 | 不眠症、不安、神経症 (虚弱体質で血色の悪い人の不眠によく用いられます) |
加味逍遙散 | 陽証 | 虚証 | 冷え症、虚弱体質、月経困難、PMS、更年期障害、不眠症 (イライラしがちな方の不眠症などによく用いられます) |
酸棗仁湯 | 陰証 | 虚証 | 心身が疲れ弱って、眠れない方に用いられます |
抑肝散 | 陽証 | 虚証 | 怒りっぽい、不眠、せっかち、歯ぎしり、瞼のけいれん (かんしゃく持ちの子どもによく用いられます。母子関係がお互いの症状と関連している場合は、親子での内服が勧められております) |
柴胡桂枝乾姜湯 | 陽証 | 虚証 | 不眠、PMS、更年期障害 (冷え症、動悸、息切れ、神経過敏、悪夢、頭汗、唇の乾燥などのある方の不眠によく用いられます) |
質のいい睡眠をとるための改善方法
漢方の処方を受ける以外にも、以下の方法をお試しください。
受診する前に一度試してみるのもよいでしょう。
- 布団、ベッド、枕、パジャマなど、季節や室温に合ったものを選びましょう。
- パジャマは、通気性や質感のよい、締め付けないものを選びましょう。ジャージなどを代用するより、パジャマとして売られているものをおすすめします。
- 寝室の明るさ、温度、湿度を快適な状態に調整しましょう。
- 規則正しい生活リズムに戻しましょう。特に起床時間を一定にすることが大切です。
- 日中は活発に活動し、運動習慣を身につけましょう。
- お風呂は、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かりましょう。
- 就寝の2時間前から、テレビ、スマホなどの視聴を避け、音楽をきいたり本を読んだりと、リラックスして過ごしましょう。
- 夕方からはカフェインの摂取を控えましょう。
- アルコールは控えめにしましょう。
- 起床後すぐ、短時間でよいので太陽の光を浴びましょう。
- 「眠らなければ」と焦れば焦るほど眠れなくなることはありませんか。そのような時は、無理に眠ろうとせず、自然に眠くなるまで読書などしてみてはいかがでしょうか。読書灯をつけて、やや堅苦しい内容の本を読むのがお勧めです。そこから得られるものもあるでしょう。